◎器くらべ◎春の出会いもの「ほたるいかと菜の花」

2022年4月5日

日本料理には「出会いもの」という言葉がありますが、

旬の食材を組み合わせて、その季節を目と舌で楽しむ、日本人で良かったと思えるもののひとつです。

 

中でもホタルイカと菜の花は、春の訪れを感じさせてくれる取合せで、私の好物です。

お店で買ったそのままのホタルイカに、あく抜きした菜の花の胡麻和えを添えて、

5種類の器に盛り付けて比べてみました。

使った器
      • 染付白菜向付

      • イッチンぶどう絵多用鉢

      • 青磁四方角鉢

      • 鳥獣戯画デザートカップ

      • おみなえし手付浅鉢

原料(質感)でくらべる

上の3つは磁器、硬質で汚れにくい点もポイントです。

ツルっとした触感に、キリっとした潔さはどんな料理も受け止める安心感があります。

 

下の2種類は陶器、柔らかな味わいがある土が原料です。

左側は、還元焼成で焼き締めた赤土の部分と、釉薬がかかっている内側との対比が面白い器です。焼き締めは夏場に使うときに一度水にくぐらせると、ひんやりした触感が涼し気でおすすめです。

右の器も陶器で、よく見ると細かい貫入がありますが、色釉が掛かっているので経年変化を楽しめますよ。

 

色や模様でくらべる

「染付白菜向付」

この古染付シリーズは、古く中国で作られていたものの写しで、白菜以外に「富士山」「琵琶」「あわび」「巻き貝」があります。料理屋さんが好んで使われる器です。そして、こちらの白菜形のうつわに描かれているのは、実は白菜の花なのです。見込みいっぱいに描かれても料理の邪魔にならず、むしろ料理を惹きたてる染付には、絶対の安心感があります

「イッチンぶどう絵多用鉢」

赤土を還元焼成で焼き締めて、内側に刷毛目で変化を付けた所に御本手と呼ばれるほんのり明るい自然な模様がでています。外側と縁の一部分に白いイッチンで描かれた葡萄絵が趣のある加藤永峰さんの多用鉢です。釉薬の掛かった刷毛目の部分に料理は盛り付けられるので、汚れも気になりませんし、重宝する鉢です

「青磁四方角鉢」

青い器がこの2~3年ちょっとしたブームですが、この青色は昔から松斎で使われている青磁です。料理屋さんでも好まれて使われています。優しい四方のカーブがいいアクセントになっているので、何を盛っても様になりますよ。普段使いにあると便利な器のひとつです。

「鳥獣戯画デザートカップ」

鳥獣戯画といっても描かれているのは外側で、内側には磁器の定番の白色に藍色のラインが1本ひかれているのみです。なので、フォルムと鳥獣戯画の面白さを見て楽しんでいただけると思います。おやつ時間だけに使うのは勿体ない、お浸し用の小鉢としても使える事が今回の「器くらべ」でわかりました。

「おみなえし手付浅鉢」

黄釉の一部分に黄緑の釉薬を重ね掛けしてあって、全体の印象が「おみなえし」のようです。単調になりがちな丸い浅鉢のフォルムに飾りの手を付け、釉薬を工夫した遊び心ある尚山陶房さんの浅鉢です。鮮やか過ぎない色目が菜の花やホタルイカにも合います。色釉の器はテーブルのポイントにもなります。

 

京都では「おばんざい」と呼ばれている煮物や炊き合わせなど、家庭料理で欠かせないお惣菜は、器に中高(なかだか)にこんもりと盛り付けると見栄えも良く、おもてなしの料理にもなります。

 

器を変えるだけで、いつもの料理を新鮮に感じる事ができます。魯山人曰く、器は料理の着物だそうですから、楽しみながら衣替え(器替え)に挑戦してみてはいかがでしょう。新しい発見があるかもしれません。

同じ種類の器

  • 銀彩もみじ中鉢

  • 麦わら手三方押し多用鉢

  • 鳥獣戯画4寸小鉢